緑内障の治療方法

点眼治療

1日1~2回程度、毎日目薬をさすことで眼圧を下げ、視神経への負担をやわらげて、症状の進行を防ぎます。
目薬の種類によっては、白目が充血する・睫毛が伸びる・目のまわりの皮膚が荒れる・目が痒くなるなどの副作用がおこることもありますが、医師と相談しながら、継続して使い続けることが大切です。

眼圧が高い状態

レーザー治療

前述のとおり、目の中には『房水』と呼ばれる水が巡っています。房水が作り出される量と出ていく量のバランスがよければ良好な眼圧が保たれますが、何らかの原因によりそのバランスが崩れ、排出がうまくいかない状態になると、眼圧が上がってしまいます。
空気を入れすぎてパンパンになったゴムボールのように、眼球も、水の逃げ道がなくなってしまうと内圧が高くなり、その影響で視神経がダメージを受けてしまうのです。

排出がうまくいかなくなる原因として、『隅角は開いているが、その先が目詰まりしている』もしくは『隅角が狭い、または閉塞してしまっている』という病態が挙げられます。それを解消するために、当院では2種類のレーザー治療をおこなっており、患者様の目の状態によって使い分けています。

治療はいずれも点眼麻酔のみでおこなうことができ、治療後は洗髪・洗顔などの生活制限はありません。
レーザーをうつ前に瞳孔を縮める点眼薬をさしますので、一時的に目の中に光が入りづらい状態になります。普段よりも視界が暗く感じるかもしれませんが、点眼薬の効果は4~8時間程度で切れますのでご安心ください。
当日は瞳孔が縮まった状態でお帰りいただきますので、お車やバイク、自転車等を運転してお越しにならないようお願いします。

眼圧が高い状態



SLT(隅角光凝固術)

隅角は開いているものの、シュレム管(房水の排水管)のフィルターである線維柱帯が目詰まりを起こしているという方におこなう治療です。
線維柱帯に色素細胞が詰まると、房水の流れが悪くなり、眼圧が上がってしまいます。この色素細胞にレーザーで働きかけることによって、フィルターの目詰まりを解消し、房水の流れをスムーズにして眼圧を下げます。
侵襲が弱く、目に悪影響を及ぼすことがないため、再度目詰まりを起こしても繰り返し治療を行うことができるというメリットがあります。
レーザーの所要時間は10分程度です。
      SLT                                

LI(虹彩光凝固術)

隅角が狭い、もしくは閉塞してしまった方におこなう治療です。
急性緑内障発作の予防もしくは解除を目的におこなわれる治療で、レーザーで虹彩(茶目の部分)に穴をあけ、房水の通り道を作ります。
レーザーの所要時間は10分程度ですが、発作を起こしてしまっている場合は先に眼圧を下げる点滴をおこなう必要があり、普段よりも目が浮腫んでいるためレーザーにも時間がかかります。

急性緑内障発作とは?

房水の通り道である隅角が何かの拍子に塞がってしまうと、作られた房水が流れ出ていくことが出来ず、行き場のなくなった房水によって眼圧が急激に上昇します。すると、頭痛・吐き気・嘔吐・充血・霞みなどの症状が現れます。その状態を“急性緑内障発作”と呼びます。

眼圧が高い状態が続くと、目と脳を繋ぐ視神経に強い負担がかかります。発症から時間が経てば経つほど、視神経の損傷はひどくなり、次第に視野が失われ、最悪の場合は一晩で失明に至ってしまうこともあります。
その発作が起きるのを防ぐために、あるいは起きてしまった発作を解除するためにおこなうのがLIです。ただし、目の状態によってはLIだけでは発作を解除できないこともあり、その場合は手術が必要になります。

急性緑内障発作には様々な誘因があります。
隅角にはもともと“瞳孔が広がることによって狭くなる”という性質があり、発作はそのように瞳孔が広がるような条件下で多く起こります。
たとえば、瞳孔が広がる作用のある薬(一部の風邪薬や睡眠薬など)を飲んだり、暗い場所でうつ伏せの姿勢でいたりするなどの行動が引き金となってきます。
夜中にトイレに起きた際、突然ひどい頭痛や吐き気に見舞われ、脳の病気ではないかと救急を受診したところ、じつは緑内障発作だったという例もあるのです。
発作は60代以上の遠視眼の方に起こりやすく、特に身体の小さいご高齢の女性には比較的多くみられます。遠視の方の眼球は近視の方の眼球よりも小さく、構造的に隅角が狭くなりやすいため、近視の方よりも発作のリスクは高まります。
医師から発作のリスクがあると言われたら、なるべく上記のような条件に該当する行動は避け、もしも発作のような症状が起こったら出来る限りすみやかに受診するようにしましょう。

手術治療

はじめに

緑内障の治療は、まず点眼薬やレーザー治療から始まります。それでも十分な効果が得られず、視野の進行がみられる場合には、手術という選択肢をご案内することがあります。

手術と聞くとご不安に感じられるかもしれませんが、当院では患者様一人ひとりの状態を丁寧に診察し、最適な治療方針を一緒に考えてまいります。手術には一定のリスクがありますが、安全性に配慮し、できる限り負担の少ない方法を選択いたします。気になることや不安な点があれば、どんな小さなことでもご相談ください。

緑内障手術の種類

緑内障の手術は、大きく3つのタイプに分かれます。それぞれの手術には特徴があり、患者様の状態やご希望に合わせてご提案いたします。

1. 房水の自然な排出を助ける手術

線維柱帯切開術(トラベクロトミー)

房水の出口となる「線維柱帯」に切れ目を入れて、眼の中の水(房水)の流れを改善する手術です。比較的短時間で終わる手術で、出血が起こることはありますが、多くの場合は自然に吸収されます。

白内障手術と同時に行うことも可能で、点眼薬の数を減らせることがあります。眼圧を下げる効果は比較的穏やかですが、安全性の高い方法として、多くの患者様に行われています。

iStent(アイステント、眼内ドレーン)挿入術

初期から中期の緑内障に適した手術です。小さなチタン製のインプラントを挿入して房水の流れを助けるもので、出血のリスクが少ないことが特長です。血液をサラサラにするお薬を服用中の方にも安心して受けていただけます。

MRI対応のチタン製デバイスで、安全性にも配慮されています。

2. 房水の新たな排出路をつくる手術

線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)

線維柱帯切除術は、眼の中の水(房水)の出口となる部分に新たな排出路をつくり、房水が自然に眼球の外へ流れ出るようにする手術です。具体的には、房水の流れを妨げていることが多い「線維柱帯」という組織を一部切除し、房水が白目(結膜)の下を通って、最終的に体に吸収されるように導きます。

この手術は、視野の進行をくい止めるために強力な眼圧下降効果を期待できる方法で、手術後には眼圧が大きく下がることもあります。中には、術後に眼圧が一桁台になる方もおられます。

ただし、眼圧が下がりすぎた場合には、眼のかたちに変化が生じ、見え方に影響が出ること(物がゆがんで見える、ぼやける、視力の低下など)があります。そのため、術後の経過を丁寧に観察しながら、必要に応じて処置を行います。

また、手術後の創傷治癒(傷の治る過程)の影響で、バイパスがふさがってしまい、再び眼圧が上がることもあります。そのような場合は、縫合糸をレーザーで調整したり、流れを改善するために針を使った処置を行ったりします。術後のケアが重要な手術であり、通院も比較的頻繁に必要となります。

この手術は白内障手術と同時に行うことも可能ですが、併用することで手術効果がやや落ちることが知られています。また、他の眼科手術に比べて術後の感染リスクがやや高く、統計的には約1%の方に感染が見られるとされています。

さらに、手術後はしばらくの間、コンタクトレンズの使用やプールなどの水に関わる活動はお控えいただく必要があります。手術を受けられる際には、こうした注意点についても丁寧にご説明し、患者様と一緒に安心して治療を進めてまいります。

プリザーフロマイクロシャント手術

プリザーフロマイクロシャント手術は、緑内障による眼圧上昇を抑えるために行う手術のひとつです。非常に細くて柔らかいチューブ状の医療器具を眼の中に挿入し、房水(目の中の水分)を自然に眼球の外へ流すための新しい通り道を作ります。

このマイクロシャントは「SIBS(シブス)」という生体に優しい柔らかい素材でできており、体へのなじみが良く、手術後の炎症や合併症のリスクが比較的少ないとされています。

従来の線維柱帯切除術に比べて眼圧の下がり方はやや穏やかですが、「眼圧が下がりすぎること」によるトラブルを防ぎやすいという利点があります。特に、眼圧が過剰に下がるとリスクが高くなると判断される患者様には、この手術を優先的にご提案することがあります。

また、手術にかかる時間は比較的短く、術後の回復も比較的スムーズであることが多いです。患者様の目の状態や生活スタイルに合わせて、より安全で負担の少ない治療法として選ばれることが増えています。

術後は定期的な診察が必要ですが、手術によって点眼薬の数が減らせることも多く、日常生活の質の向上にもつながる可能性があります。

3. 緑内障インプラント手術

緑内障インプラント手術は、眼の中に細いチューブを挿入し、房水(目の中を循環している液体)を目の外へ流しやすくするための新しい排出口を作る治療法です。この方法は、2012年に日本で認可された比較的新しい手術ですが、欧米では30年以上の実績があり、多くの患者様に行われてきた信頼ある治療です。

この手術では、チューブに加えて、房水を眼の奥で分散させるためのシリコン製のプレートも一緒に眼球の後方に固定します。これにより、眼圧を効果的に下げることが期待できます。特に、これまでの手術(例:線維柱帯切除術)で十分な眼圧の低下が得られなかった場合や、再手術の成功率が低いと判断されるケースで、選択されることが多い方法です。

この手術には高い有効性が期待されますが、一方でいくつかの注意点もあります。たとえば、シリコン製の器具を目の中と外に入れるため、まれに器具が目の表面に露出したり(約5%の確率)、眼球の動きに影響を与えて物が二重に見える(複視)ことがあります。また、チューブが角膜に触れることで、角膜の細胞が減って透明度が低下する「水疱性角膜症」を引き起こすこともごくまれにあります。

このようなリスクがある一方で、他の手術では眼圧が十分に下がらなかったような難しいケースでも、安定した眼圧のコントロールが得られる可能性があります。眼圧が極端に下がりすぎることは少ない反面、点眼薬を併用して眼圧を「10mmHg台前半〜半ば」に保つことを目指すケースが多いです。

術後は眼圧の変動を慎重に見守る必要があるため、定期的な通院が必要です。手術後も医師としっかり連携をとりながら、経過を丁寧に見ていくことが大切です。

バルベルト緑内障インプラント

バルベルトインプラントは、長期的に眼圧の安定が必要な若い患者様などに用いられることが多い手術です。チューブとプレートを用いて房水の排出を助ける点は他のインプラント手術と同様ですが、より強い眼圧下降効果と、その効果が長く持続することが特徴です。

ただし、手術直後すぐに眼圧が下がると眼に負担がかかってしまうため、最初は溶ける糸でチューブを一時的に閉じておき、6~8週間かけて自然に開通する設計になっています。これにより、眼圧を段階的に下げて安全性を高める工夫がなされています。

アーメドバルブ

アーメドバルブは、ご高齢の方や、視野障害がかなり進行している方に適した緑内障手術です。

このインプラントには、**一定の眼圧以下になると自動的に閉じる「バルブ機構」**が内蔵されており、眼圧が下がりすぎるのを防ぐ安全装置のような役割を果たします。そのため、手術後すぐに眼圧をしっかり下げることができ、急激な変化を防げる点が大きな特長です。

一方で、長期的にみた眼圧下降の効果については、バルベルトインプラントに比べてやや穏やかとされており、場合によっては術後に追加の処置が必要となることもあります。また、まれに眼圧が予定よりも下がりすぎてしまうケースもあるため、そのような場合には早めに対応いたします。

患者様の病状、生活背景、希望などを総合的に考慮しながら、もっとも安全で効果的な術式を一緒に選んでまいります。ご不明な点がありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

よくある質問

緑内障には自覚症状としてどのような見え方の変化がありますか?また、どんなことに注意すればよいのでしょうか。

「視野の中に見えない範囲がある」「見える範囲が狭くなってきている」などが代表的な自覚症状になります。

眼科ドックについてドライアイや緑内障などの病気を早期発見するため、40歳を過ぎたら眼科ドックを受けた方がいいと言う記事を読みました。この様な検査はどこの眼科でも受けられるのですか?

A.眼科の専門ドックについては、どこの眼科でも実施している訳ではありませんし、眼科ドックを標榜している病院はまだ、数多くありません。

目のレーザー治療の副作用を教えてください。

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