甲状腺眼症|まぶたに関わる治療

甲状腺眼症とは?

甲状腺眼症は、免疫異常による疾病です。免疫系が誤って甲状腺を刺激する抗体を作ってしまい、甲状腺刺激ホルモンの受容体(TSH受容体)やインスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)を攻撃します。その結果、目の周りの組織に炎症が発生し、腫れやむくみ、過剰なコラーゲンの生成や線維化などが起こるのです。具体的には次のような症状が見られます。

  • まぶたの腫れ(涙腺腫脹時)
  • 充血
  • 眼球突出
  • 視力低下
  • 眼球運動障害による複視
  • まぶたが上がることによるドライアイ

例:眼球突出

眼球突出

甲状腺眼症には、症状の段階に応じた治療方法があります。
重症化を防ぐためにも、早期に発見し治療を開始することが大切です。

活動期の治療方法

活動期とは、発症早期の『炎症や症状の悪化・進行がある時期』のことを言います。
炎症を落ち着かせるには活動期のうちに治療を始めることが有効で、この時期には、身体にメスを入れない非外科的アプローチをおこないます。

ステロイド療法

ステロイド剤を投与し、免疫の働きを抑え、炎症を鎮める治療です。点滴や局所注射をおこないます。
点滴は週3日×3週間おこなうDaily法と、週1日×12週間おこなうWeekly法があります。入院または通院で治療をおこないます。また、ステロイド剤をまぶたに注射して炎症を抑える方法もあります。
※ステロイド剤による全身への影響が考えられることから、現在当院では治療をおこなっておりません。

放射線治療

目のまわりに放射線を照射し、炎症を引き起こしている免疫細胞を減らす治療です。
一般的には週5日×2週間のスケジュールでおこなわれることが多く、痛みはほぼありませんが、将来がんになる確率が1~3%上がると言われています。
※35歳以下の方は治療の適応外です。
※当院では設備がないため、治療はおこなっておりません。

分子標的療法

甲状腺眼症治療用IGF-1R阻害剤「テッペーザ」を投与する治療です。
テッペーザは活動性甲状腺眼症に対するお薬で、炎症・脂肪の増加・筋肉の肥大化を抑制する作用があり、眼球突出や眼球運動の改善が期待できます。当院ではこちらの治療をおこなっております。

テッペーザとは

2024年9月に日本で承認された、活動性甲状腺眼症の治療薬です。
これまで活動性甲状腺眼症の治療には、手術かステロイド療法、もしくは放射線療法しか方法がありませんでした。新たな選択肢としておおいに期待されているテッペーザですが、多摩地区ではまだ治療施設が少ないのが現状です。
治療に際しては副作用や使用制限に注意するとともに、治療前にリスクをよく理解し、医師の指示に従うことが大切です。

また、治療後の経過観察も重要です。テッペーザの使用によって症状が緩和されても、病気自体が完治したわけではないからです。進行を遅らせることで症状が改善しただけであり、再発する可能性もありますので、自己判断で通院を中断せず医師の指示に従って受診をお願いいたします。

治療方法

薬剤を3週間ごとに合計8回点滴する治療です。

初回 体重1kgあたり10mgを90分かけて点滴を通して静脈に注射
2回目 体重1kgあたり20mgを90分かけて点滴を通して静脈に注射
3回目以降 体重1kgあたり20mgを点滴を通して静脈に注射
2回目までに異常がなければ点滴時間を60分に短縮可能
※医師の指示により90分のままの場合もあります
治療方法
注意点・副作用

テッペーザが使用できない方は以下の通りです。

  • 妊娠または妊娠している可能性のある方、授乳中の方
  • 小児の方

以下の方は禁忌ではありませんが、使用する際には注意が必要です。

  • 高齢の方
  • 聴覚障害のある方
  • 糖尿病、耐糖能異常のある方
  • 妊娠する可能性のある方
    ※投与期間中の最終投与から5ヶ月は避妊が必要です

治療中も副作用が出ていないか定期的に検査が必要です。副作用の発現リスクを抑えるためにも、医師の指示に従い、適切に検査を受けるようお願いいたします。
他の薬剤との飲み合わせにも注意が必要なため、かかりつけ医や新たに病院を受診する際には、他科の医師や薬剤師にテッペーザを使用中であることを必ずお伝えください。
以下の症状を感じた場合はすぐにご連絡ください。

主な副作用
聞こえづらい、耳鳴りがする、耳が詰まる感じがする、体のだるさ、のどの渇き
体重減少、水分の多量摂取、尿量の増加、悪寒、発熱、意識の低下や消失、めまい
嘔吐、せき、動悸、まぶたや唇や舌の腫れ など
費用

テッペーザの薬価は500mg(1瓶)あたり979,920円で、高額な薬剤です。
体重・治療回数によって使用量が異なるため、具体的な窓口負担額は患者様によって異なります。
また、この治療は投与開始月から高額療養費支給対象になります。そのため、4ヶ月目以降は基本的に高額療養制度の“多数回該当”が適用されます。

※多数回該当とは、過去12ヶ月以内に自己負担限度額を超える月が3回以上あった場合に、4回目から自己負担額が下がる特例制度です。高額な医療費が頻繁に発生する世帯の経済的負担を軽減することを目的としています。

治療スケジュールが3週間ごとであるため、投与開始日(上旬か中旬以降か)によって最初の3ヶ月間の投与回数が異なることがあり、窓口負担額に影響することがあります。

上旬(10日頃まで)に治療を開始する場合 最初の3ヶ月間の投与回数は5回
中旬以降に治療を開始する場合 最初の3ヶ月間の投与回数は4回
治療方法

※治療を検討される方は、詳細についてお問い合わせいただくか以下のサイトもご覧ください。

非活動期の治療方法

非活動期とは、『炎症は落ち着くが症状が残る時期』のことを言います。
活動期には出来るだけ発症前の状態に近付けられるように治療をおこないますが、それでも症状が残ることがあります。(治療を受けずに自然経過をたどった場合は、症状がより強く残ってしまいます)
この時期には、見た目や目の機能の改善のため、身体にメスを入れる外科的アプローチをおこないます。

  • 眼窩減圧術
    目の周りの骨を削ったり脂肪を減らしたりして、眼球がしっかりと収まるスペースを作り、眼球突出(いわゆる出目、ギョロ目)を改善する手術です。
  • 斜視手術
    炎症で筋肉が硬くなることにより、目の位置がずれ、物が二重に見える『斜視』という状態になることがあります。それを改善するための手術です。目の状態によっては、切らずにボトックス注射をおこない、一時的に筋肉を緩めることで症状の改善を図る場合もあります。
  • 眼瞼手術
    甲状腺眼症によってまぶたが引き攣れて後退し、びっくりして見開いたような目つきになってしまった目を、自然な状態に戻すための手術です。

眼瞼下垂のよくある質問

眼科の病気の治療で健康保険が適用されない場合があると聞きましたが、どう言うことですか?

A. 分かり易いように眼瞼下垂や眼瞼内反の治療を例にとって説明してみます。

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