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2025年08月28日
多焦点眼内レンズは、老眼や近視、乱視などでお困りの方にとって優れた視力回復の選択肢となります。しかし、手術前にその特性などをしっかり理解していないと、術後に「期待していた見え方と違う」という不満をかかえてしまう可能性もあります。
ここでは多焦点眼内レンズのメリット・デメリットや単焦点眼内レンズとの違い、レンズを選ぶうえで重要となるポイントなどを解説していきます。
一般的に、単焦点眼内レンズは遠く(約5m)か近く(30~40㎝)のどちらか一方にピントを合わせたレンズです。例えば遠くにピントを合わせると、手元を見る際は必ず手元を見るための眼鏡(老眼鏡)が必要になります。
一方、多焦点眼内レンズは目に入った光をそれぞれの焦点に振り分けることで複数の距離にピントを合わせるという設計をしているため、遠くも近くも眼鏡を掛けずに見ることができます。しかし、全ての光を活用して一点を見せる単焦点眼内レンズと比べるとどうしても見え方の質が劣ってしまいます。(すっきり見えない、コントラスト感度が下がる、ハロー・グレア・スターバーストの出現など)
画像①コントラスト感度の低下(画像提供:日本アルコン株式会社)
画像②ハロー・グレア・スターバースト(画像提供:日本アルコン株式会社)
また、価格という点においても大きな違いがあります。単焦点眼内レンズは保険診療のため患者さんが負担する金額は3割負担の場合で片眼5万円ほどですが、多焦点眼内レンズは自由診療、もしくは選定療養(レンズのみ自己負担でその他検査費用などは保険診療)となりますので、レンズの種類や保険の負担割合にもよりますが片眼37万~90万円ほどかかります。
多焦点眼内レンズは遠くも近くも見えるとても便利なレンズではありますが、事前にその特性やデメリットを理解していないと、術後に満足のいく結果にならないこともあります。術後に後悔しないために、レンズを選ぶうえで重要なポイントを3点ほど紹介します。
①目の健康状態
多焦点眼内レンズを入れるためには、まず手術の前に目の健康状態を確認する必要があります。
白内障以外に特に目の疾患がなければ問題なく多焦点眼内レンズをお選びいただけますが、目の表面や奥に何かしらの問題があると、手術をしたとしても多焦点眼内レンズのパフォーマンスが十分に発揮されない場合があります。
目の状態によってはそもそも多焦点眼内レンズを勧めないこともありますが、「若干パフォーマンスが低下する可能性はあっても、メリットのほうを重視して敢えて選択する」という場合もありますので、ご自身の価値観等もふまえ、術前に医師とよく相談しましょう。
②ライフスタイル
普段の生活ではどのような距離のものをよく見ているのか、手術後はどのような生活を送りたいのかといったことを事前に確認し、明確にしておくことも重要なポイントとなります。 日常での運転やスポーツなどで複数の距離を同時に見ることが多かったり、可能なかぎり眼鏡を使用する場面を減らしたいという方には多焦点眼内レンズはおすすめです。 しかし、夜間の運転や手元の細かい作業が多い等、特定の距離をしっかり見なければならないことが多い方は、多焦点眼内レンズにすると術後の見え方に不満を覚えてしまう可能性があります。また、絵画や写真など色のコントラストにかかわる趣味や仕事をされる方も同様です。
③性格
遠くも近くもある程度見えればいい、細かいことはそこまで気にならないという方も多焦点眼内レンズに向いています。 反対に、この距離、この場面では絶対にはっきり見えるようにしたいといったこだわりがあったり、几帳面で少しのことでも気になってしまうという方は多焦点眼内レンズはあまり向かないかもしれません。
多焦点眼内レンズは手術費用が高額であり、それだけ患者様の期待も大きくなりがちです。もちろん医療機関としては患者様に満足してほしいという思いで手術をしていますが、100%期待通りの結果が得られるとは限らないということをご理解ください。
また、手術後の視力回復には個人差があり、手術が問題なく終わっても、ご自身の理想値まで視力が出ない場合や、近視・乱視などがわずかに残る可能性があることも覚えておきましょう。
そして、多焦点・単焦点問わず、白内障手術自体は比較的安全性が高く短時間で終わりますが、「レンズを入れたらそれですべて終わり」というわけではありません。
術後のケアが不十分だと、感染などの重大な術後合併症を引き起こし、せっかく回復した視力が大幅に低下してしまうということもあり得ます。どのようなレンズを選んだとしても、ケア不足によるリスクは変わりませんので、術後は洗顔洗髪や運動等に制限があること、医師の指示通りに点眼・通院が必要になることなどをあらかじめ理解しておきましょう。
多焦点眼内レンズは、術後に眼鏡を使う頻度を減らすことができるため、日常生活をより快適に過ごしたい方にはおすすめのレンズです。
術後の見え方を正しくイメージするためにも、手術の前にはレンズの特性やメリット・デメリットをしっかりと理解し、医師とのコミュニケーションを大切にすることが後悔しないための最も重要なポイントとなります。
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